ハメドゥスト    テヘラン通信   第30号 






 サラーム。ハレショマフーベ。
 テヘラン日本人学校の2学期もスターとして2週間が過ぎました。現在、運動会の取り組みで児童・生徒も先生も忙しい日々を送っています。「少ない人数の運動会なんて・・」と思うかもしれませんが、テヘラン在住の日本人の人達も参加するので、例年たいへん盛り上がったものとなっています。人数が少ない分、運動会を運営するために、小学校高学年と中学生一人ひとりに重要な役割が分担されており、それぞれが張り切って練習しています。先生は、体育の先生として運動会関係の仕事と全校で踊る「ソーラン節」の指導に燃えています。みんな一生懸命取り組んでくれているので、毎日がたいへん楽しいです。 皆さんも全員の力で盛り上がった体育祭を目指して頑張って下さい。2学期ほど学校がおもしろい時はないですから、精一杯楽しんで下さいね。
 さて、今回からイランの伝統工芸についてです。

 
◆ イランの伝統工芸

 伝統工芸とは、主に手作業で何百年も前から受け継がれた作り方で制作された日常生活でも使う美術的工業生産(品)のことを言います。たいてい、ある一定の地域で作られていたり、その地方独自のデザインや形があったりします。イランでは、有名なペルシャ絨毯(じゅうたん)、寄せ木細工、更紗(さらさ)、彫金(ちょうきん)陶器などがあります。今回と次回はプレゼントした寄せ木細工と更紗についてです。

(1)ハータム・カーリー

 ハーターム・カーリーというのがイランの寄せ木細工の正式名称です。色の異なる木片を組み合わせて幾何学(きかかがく)模様をつくり、小物入れやペン立て、額縁などの表面に張り付けたものです。 
日本にも、箱根細工と呼ばれる寄せ木細工がありますが、ハータム・カーリーはその細かさで箱根細工の比になりません。1平方センチメートルに100本以上の木片が使われることもあります。イラン以外の中東の国にも同じようなものがあるのですが、イランのものほど繊細で精緻な作品はないそうです。14世紀にシーラーズで作られたのが始まりです。

 材料は、各種の木(ナツメの木の赤い部分、黒檀のチーク材、つげなど)、ラクダの骨、真鍮(しんちゅう:銅と亜鉛の合金)で、この他に、象牙や銀が使われることもあります。
作り方ですが、

@各種の木を厚さ2o幅5p、長さ70pほどに切って乾かします。乾燥後、2o幅の薄い棒にします。ラクダの骨も木と同様細い棒にされ、4ー6ヶ月間、緑色の液に漬けられ色を固定させます。真鍮は70pのワイヤーに切断されます。

A木や緑色になったラクダの骨はヤスリで、真鍮のワイヤーはハンマーで断面が正三角形になるように整えられます。

B細長い棒の準備が終わると、パターンに組み合わせていきます。小さな三角形を組み合わせて六角形や大きな三角形を作っていきます。接着剤は、ラクダの骨から作っているそうです。

C三角形や六角形を組み合わせ、さらにブロックを作ります。

Dできたブロックの束の棒を、3oほどの厚さで切断し、さらにそれらを相互に接着剤で張り合わせ、シート状にしてから、目的の物にはられ完成します。

この寄せ木細工を作っているところを見学に行きましたが、その作業の細かさにはたいへん驚かされました。
時計の縁の部分の小さな円状のものがCの部分に当たります。