ハメドゥスト テヘラン通信 第54号
カスピ体験旅行日記 〜2〜
予定通りキャビア作業所へ。許可がないと見学ができない特殊な場所で、約1ヶ月かかって取った手紙を責任者に示し、見学許可をもらった。間もなく、漁に出ていた船が続々と帰ってきて、チョウザメから卵を取り、キャビアが作られる工程を全て見ることができた。まず、2匹のチョウザメが生きたまま小舟から持ってこられ、頭を叩かれ、気絶させられた。そして、すぐに腹を割かれた。雄は、床の上で腹を裂かれたが、雌は台の上に上げられ、丁寧に2人がかりで腹を裂き、卵を取り出していた。丁寧に卵を取り出した後は、卵を粒にほぐす作業。ザルを逆さにしたようなものでゆっくりとほぐしていた。次に、別に部屋に持っていかれ、重さを量り、その重さに見合った塩を卵の中に入れ、ゆっくりと丁寧に混ぜられていた。最後に、缶の中に入れられてキャビアの出来上がり。30分後には食べられると言う話だった。でも、少し時間をおいた方がよりおいしく食べることができるらしい。その後、また2匹のチョウザメが持ってこられ、2匹でキャビアが4、5Kg作られた。子供達は、チョウザメの頭が叩かれ、気絶させられることことや腹を裂かれること、血を見ることなどに拒否反応を示したが、自分たちの生活の中で同じようなことが行われ、人間の生活が成り立っていることに気づいてくれたようだ。その後、キャビアの作業所の人に質問する時間を取り、20こほどの質問をし、答えてもらった。伺ったことを一部紹介すると、カスピ海には3種類のチョウザメがいて5ー6sのものが普通の大きさで、大きいものの中には40sを超すものがある。チョウザメ漁は政府機関が管理し、昔のように個人で漁をすることは禁止されている。そして、チョウザメ漁の期間も年頭に決められ、その時期にしか漁をできない。見学した時には、「ドラクール(セヴルーガ)」という種類のものが捕られていて3月20日から6月21日まで捕られている。カスピ海沿岸には、見学を行ったようなキャビアの作業所が40カ所ほどある。キャビアは適温で保存すれば最高2年はもつ、ということだった。
その後、チャイ工場へ直行。しかし、チャイ工場にはチャイの葉が少なく。期待していたほどのものは見学できなかった。前日の工場長の話では自信たっぷりだったのに・・・。1ヶ月、2週間、1週間、3日、前日と確認を取っていたのに・・・。
昼食は、宿舎で取った。テヘランでも食べられるチキンやラムのキャバブ(炭火焼き肉)、グビデと呼ばれるハンバーグに似たキャバブ、チキンシュニッツェル、マヒ(魚)キャバブの他に、カスピ海沿岸地域でしか食べれないミルザ・ガセミ(なすとトマトをつぶして、にんにくと煮たもの)、チョウザメのキャバブなどが料理された。チョウザメは卵だけでなく、肉も珍重されていて、そのキャバブはイランの人達が好む香辛料につけられてから焼かれる。鶏肉のような歯ごたえがあり、魚と鶏肉を同時に食べてい
るような感触だった。
その後、カスピ海での水泳の時間。イスラムのルールに従い、イラン文部省の指示通り活動することにした。その指示とは、ビーチにビニールシートのフェンスを作るので、その中で活動すること、全員水着の上にTシャツを着て、水泳帽をかぶる、女子に関してはスパッツを水着の上からはく、というものだった。1時間も前から宿泊所の人達はビーチに穴を掘り、そこへ杭をさし、ビニールシートでフェンスを作ってくれていた。有り難い気持ちとこのような異常な国で自分たちが生活していることに対して少し悲しくなった。でも、イランの人達はもっと厳しいイスラムの教えの下で暮らしている現実がある。海水浴に関していえば、女の人が人前で泳ぐにはコートとルサリーをして日常生活と変わらないヘジャブ姿で行わなければならない。先日のイランの3連休の休みの日には、多くの女の人が命を落としたという話も聞いている。この国の現状を肌で感じるには、子どもたちにとって良い体験だったかもしれない。また、カスピ海の渚でゲームをして楽しめたことは、彼らにとって一生の思い出になることだろう。水泳の時間のメニューの最後のスイカ割りで最後の生徒がスイカを割った時点で大粒の雨が降ってきて、急いでバスに退散した。
<つづく>