ハメドゥスト    テヘラン通信   第20号 






 今回も前回の続きです。

◆ 物品購入クーポン券
 イランでは、国民全てに政府関連の店で使える「物品割引券」を銀行や郵便局で発行しています。その券で肉、食用油などの食料品が格安で買えることになっています。政府関連店以外の店の約半額以下で購入できるそうです。しかし、それを使うには店の前にできる長い行列に並ばなければならず、裕福な人はその権利を放棄するそうです。貧しい人を救済するための国の政策なのですが、矛盾を含んだものになっています。
 貧しい人たちは、このクーポンを使い物品を購入し、それを他の店に売ったり、道行く人に売ったりして差額を得て生活に必要な別のものを手に入れて、やりくりしているそうです。

◆市内進入禁止ルール
 テヘランでは、市内の交通を制限するため朝6:30から夕方5:00まで、タクシーと許可された車しか入れない特別な交通ルールがあります。しかし、1日や1年間の許可証を買うことができ、交通制限が目的なのかお金儲けが目的なのかよく分からないものになっています

◆外国人特別料金
 世界の国々で外国人に対しては、何らかの割引システムがあるのですが、イランではそれがなく、反対に割増料金システムとなっています。ホテルに泊まるときにはリアルでなくドルで支払い、イランの人の3倍以上支払わなくてはならず博物館では10倍以上になります。理由ははっきりと分かっていませんが、これは、宗教関係者によって制定されたそうです。

◆ 検問所 
 ほとんどの町の入り口や出口でチェクポイントがあり、不審な車は警察に止められて調べられます。昔の関所のようで、そこを通るときはイヤな気持ちになります。

◆ 郵便物に関税
関税とは普通、国境または一定の境界線を通り過ぎる貨物に課す税金を指し、特に商品となる物を対象にしています。 
ですから、商用でない個人のものであれば関税はかからないはずなのですが、日本から送ってもらうものにはなぜか全て税金がかかっているのが現状です。それも2sや5sの小さな荷物に対してです。もちろん、荷物は開封して調べられ、特に、食料の場合は税金が高くなっています。全て、商用とみなされているようです。そんなに高い税金ではないのですが、納得できないので、日本から荷物を送ってもらう時には全てのもの封を開け、ゴミ袋に一つにして入れてもらうことにしてもらっています。
 商用でないことを示すためです。先生方の中には、名前を書いて送ってもらっている場合もあるそうです。税関で荷物を抜かれ、それがお店に並ぶこともしばしばあるからです。

◆ 黒塗りの新聞
 割高になりますが、海外でも日本の新聞を購読することができます。日本人学校でも、2、3日遅れの新聞を毎日読むことができます。
 ただ時々、マジックの跡で読みにくい部分があります。写真で女性の体の線が見えている部分はマジックで消されているため、その裏のページも真っ黒になるからです。スポーツ、広告欄はもちろん社会面の小さな記事に出てくるお婆さんの写真にまでチェックが入っています。
 これはイスラムのルールのためです。以前、イランに入国する際、スポーツ雑誌に載っていた力士の写真にまでマジックで塗られた人もいるそうです。

◆ 著作権無視
 著作権とは、本などを著し、発行した人がその本の複製や放送などの独占できる権利をいいます。今、国際的に著作権を保護する活動が活発になっています。
しかし、ここではそんなことにはお構いなしでオフセット(複製)は当たり前になっています。英語の辞書や参考書から医学書の専門書に至るまでありとあらゆるものがコピーされ本になっています。コピー商品なので値段はとても安く、先生もその恩恵を受けています。
このコピー商品にもイスラムの規制が入り、例えば、参考書の会話文の中にbeer(ビール)やwine(ワイン)などの言葉があれば、coffee(コーヒー)やmilkに置き換えられています。



                   断食月、ラマザン

 1月22日からイランでは基本五行である断食(サウム)が始まりました。これは、イスラム暦第9番目の月ラマザン(アラビア語はラマダン)に行われるもので、全世界のイスラム教徒によって行われています。断食は毎年1月22日からとは限りません。イスラム暦のため少しずつずれていきます。(来年は1月9日頃の予定だそうです。)
 断食は、病人、妊婦、子供、旅人を除く全てのモスリムによって行われ日の出から日没まで一切の飲み食いを断つことが命ぜられています。他に性交、喫煙、頭から水を浴びること、食べたものをもどすことなど10項目も禁止されています。断食の理由をコラーンには、断食をすれば、「真に神を畏れかしこむ気持ちが出てこよう」と書かれているだけです。心身共に清め、神を敬うのが目的なのでしょう。 
 日中、レストランをはじめ飲食店は店を閉め、毎日テレビで放送される日没時間になると一斉に開店しています。やはり、断食のせいかイランの人たちは普段より元気がなったり、イライラしているようです。断食は2月21にちまで続きます。