ハメドゥスト テヘラン通信 第16号
学校でPTA活動として「家庭で語るイラン・テヘラン」という本を作ることになり、先生も投稿しました。それを今回のお便りにします。
テヘランタクシー事情
テヘラン市内を移動するにはバスとタクシー以外には交通手段がありません。バスは運賃が安くて、男女分かれて乗車するというイランの習慣を経験できるので、利用することはあるのですが、バスの路線や行き先が分からないことがあり、どうしてもタクシーを利用することが多くなります。
私達日本人学校の教員は、校長先生以外車を持っていないので、タクシーが足となっているのが現状です。ですから、タクシーの呼び方や乗り方、対応の仕方などに関してはテヘランにいらっしゃる他の日本人の方々よりも精通しているとどの職員やその家族の方も自負していることでしょう。
テヘランには大きく分けて二種類のタクシーがあります。一つはテレフォンタクシー、もう一つは乗り合いタクシーと呼んでいるものです。
テレフォンタクシーは電話をかけ、行き先を告げ、自分の住所などを言えば車は来ます。日本とそんなに変わらないようにお思いでしょうが、違うのはドライバーは行き先を言っても場所が分からない場合があるので、行き先の道順などはドライバーに指示しなければならないことや、また、メーターを備え付けている車は少ないので(備え付けていても使わないが)正規の運賃はあってないようなところです。料金はテレフォンタクシーは最低でも普通の乗り合いタクシーの15ー20倍は払わなければなりません。
乗り合いタクシーは現地の人々がよく利用しているもので、彼らはこのタクシーを乗り継いで目的地まで行くようです。
乗るときはまず、進行方向に向かって道路の右側に立ち(できるなら交差点付近がいい)、タクシーあるいはタクシーらしい車を見つけます。(慣れれば、ドライバーと目が合えばそれがタクシーかそうでないか分かってきます。)次に、走っているその車に向かって窓越しに自分の行きたいところを叫びます(例えば、「モスタギム」「バナック」など)。ドライバーは行き先を決めて走っていますので、彼らと行き先が合えば車は止まってくれます。後は、その車に乗るだけですが、目の前に車が止まらないことがあるので、そんなときはダッシュでその車まで走ります。ゆっくり歩いて近寄って行くと乗る気がないとみなされ走り去ってしまうからです。フリーウェイでは、高速で走っている車に大声で声をかけ、50m先ほど前方の車に荷物を持って走って行く家族連れなどが見られます。
乗車定員は、ドライバーも入れて7人(前3人、後ろ4人)以上なので、たいへん込み合います。夏の暑い日に、体格のいい、顔も腕も毛むくじゃらのアガと前部座席に2人で肩を組んだように乗り、顔や腕に彼の毛がチクチクしたあの経験は忘れられません。
車は、スピードメーターが壊れていたり、中からドアが開けられなかったり、シートが破れていたり、窓を開けられない車がほとんどです。後部座席のドアがないタクシーが走っているのを見たこともあります。しかし、この乗り合いタクシーの料金は非常に安く、最低料金が200リアルなので、車の事に関しては文句は言えません。
タクシーの乗り方で注意しなければならないことがいくつかあります。
まず、車に乗っているときは常に車を運転しているように周りに注意しておくことです。(注意しなくても、数回乗れば必ず身に付くのです。が・・・)ご存じのようにテヘランでは交通事故が頻繁に起こっているらです。事故に遭ったら、最小限の被害で済むよう努力することが必要なのです。もし、ドライバーが荒っぽい運転をするときは、彼に「ヤバシ、ヤバシ」「モバゼッバシ」などと言って安全運転するようアドバイスしなければなりません。
次に、料金はタクシーに乗る前に決めておくのがベターです。特に、テレフォンタクシーでは、先にも触れたように正規の値段がないので、ドライバーは、外国人に対しては通常よりも料金を多く取ろうとします。乗り合いタクシーも交渉次第で行きたい所に連れていってくれるのですが、巧妙な手段で少しでも多く料金を多く取ろうとします。そのような時は、はっきりと「ナァッ!」と言ってドライバーと喧嘩をしましょう。日本円にするとたいした金額ではないのですが、ここで生活している以上、そうすることが次の人に乗る人のためにもなるのです
最後に、タクシーに乗れば80%以上の確率で、「ビザをくれ」と言われますから、英語やファルシーで断れるようにしておいた方がいいでしょう。一度彼らと話をすると、もう友達になってしまうので、彼らの要求には穏やかにかつはっきりと断わらなければなりません。
私は、いろいろな経験ができる乗り合いタクシーを好んで利用しています。タクシーのドライバーや一緒に乗った客から、彼らの生活や文化を感じることが出来るからです。タクシードライバーの中には、エンジニアや教師がたくさんいてドライバーを副業にしています。メインの仕事では暮らしていけないからだそうです。テヘランで生活するようになって間もない頃、タクシーに乗ったつもりが一般の人の車だったことがありました。乗せてくれた人は、私が困っていたようで方向が同じだったから乗せたというのが理由だったのですが、イラン人のホスピタリティーを感じました。
一人で乗る時は、不安になることもありますが、安全には十分気を付けてこれからもタクシー乗車を楽しみたいと思っています。私とタクシーに纏わる話しはいろいろとあるのですが、紙面の都合で今回はこれぐらいにしておこうと思います。
用 語 説 明
1、モスタギム→まっすぐ 2、バナック→バナックという場所の名前
3、アガ→英語で言うミスター。男の人を指す場合に使う。
4、200リアル→日本円で約6円 5、ヤバシ→ゆっくり
6、モバゼッバシ→気をつけて 7、ナァッ→Noの強い言い方
8、ビザ→入国許可証 9、ホスピタリティー→親切なもてなし
後日談→HPを観ていただいている方から以下のようなアドバイスがありました。訂正させていただきます。
テヘラン通信について、補足があります。
社会見学で回転レストラン!? テヘラン日本人学校の特色の一つとして月一回、社会見学が行われていることが挙げられます。今までに遺跡、カナート、化石、カスピ海周辺、自動車工場の見学などを行ってきました。そして、12月は、美術館、博物館めぐりと買い物学習を行いました。ただ、今回は今年度最終回で、できるだけ時間を有効に使おうということでテヘランを見下ろして昼食を取ろうという計画も入れられました。そして、エルブルズ山脈とテヘラン市街を一望できる14階建ての回転レストランで全校児童・生徒全員で昼食を食べてきました。天気がよいと言えない状態でしたが、ある程度テヘランの街の様子が見れ、満足して見学を終えました。ガラス張りの屋外エレベーターがあり乗ってみたのですが、日本ほど安全面に気を使っていないものだったので怖い思いをしました。このようなユニークな社会見学は初めてだったので、子ども達も先生もたいへんいい経験ができました。 |